海外安全対策情報(2017年7月-9月)
平成29年11月3日
1 治安・社会情勢
(1)2017年7月~9月のハイチ治安情勢は,新政権発足後一定期間が経過したものの,与野党間の不満や生活環境等の改善に向けた各種デモは引き続き発生し,貧困層の生活レベルにおいてはただちに改善があるわけでもないことから各種犯罪統計的には大きな変動はない。ギャング等の掃討作戦も奏功しているが引き続きスラム街を中心にギャング間の闘争等も発生しており留意が必要である。
なお,昨年のハリケーン・マシューによる主に南部における被害に加え,新たに今年の4月にかけての豪雨により家屋,農業,インフラ等への影響が再度,南部(レ・カイ市を含む南県の11市)において発生し甚大な被害を受けた。また秋のハリケーンシーズンには,直撃はなかったものの,イルマ,マリアの影響が主に北部で広範囲にあったため,引き続き市民の生活状態は極めて厳しくなることが予想され,不満によるデモや暴力行為等治安状況の悪化を注視する必要がある。
また,新政権発足までに継続していた高インフレ,通貨安の影響は,新政権発足後,通貨安の進行には歯止めがかかった状態となったものの,燃料価格等の引上げや,新年度予算と併せて各種税収対応策が盛り込まれ,一部国民の不満に影響を及ぼしていることから引き続き社会的な不安・不安定に留意が必要となっている。
(2)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は極めて高い。
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に増加傾向が見られる。
《主な報道・事件》
ア 7月13日 ペチョンビル(Petion-Ville)市モルヌ・カルベール(Morne Calvaire)地区において,複数名の強盗が住居侵入を図り住居内に居合わせた家政婦2名へ暴行,1名は刃物により刺され,もう1名は頭部を数回強打され病院にて加療。
イ 7月15日 ドミニカ共和国からの長距離バスが,国道1号線沿いのハイチのセメントと呼ばれる界隈において,鉈を持った武装した人々によって道路を塞がれ金銭の要求のみされ,運転手とバスに乗車していた警備員が30ドルを手渡しバスは通常通り運行を再開した。
ウ 9月1日 元法務省大臣だったミシェル・ブルナシュ氏は昼間,デルマ75番通りで,バイクに乗った何人かに暴行をくわえられ片足を骨折し,病院に運ばれた。
(2)殺人
《傾向》発生数は減少傾向にある。
《主な報道・事件》
ア 7月3日 フォンタマラ地区ビゾトンの公共広場において,複数の傷を負ったダヴィッド・ドウグラス氏(享年24歳)は,学生殺害事件の死体として発見された。
イ 8月26日 ペチョンビル市内中心部の路上において銃撃事件が発生し,1名が死亡・1名が負傷した。
ウ 8月27日 首を切られた男性の死体がプチ・ゴアーヴの11区にあるベアトリスで見つかった。
エ 9月29日 ペチョンビル市内中心部の美容販売店において強盗による銃撃事件が発生し,店主1名が死亡・1名が負傷した。
(3)強姦
《傾向》発生数に増加傾向が見られる。
《主な報道・事件》特になし。
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》発生数に減少傾向にある。(投石ほか,警察と衝突するケースが増えている)
《主な報道・事件》
ア 9月6日 2017年度の国家予算案は,上下両院議員による改正なしに承認されたものの,野党や不満を抱く国民からデモやストライキ等の抗議活動が実施された。
イ 9月12日(前11日に引き続き)ポルトープランス市等ハイチ首都圏において野党勢力によるデモが複数実施され,本12日について市内各地において混乱と被害がもたらされた。
ウ 9月30日 ポルトープランス市等ハイチ首都圏において野党勢力(アリスティド元大統領派のファンミ・ラヴァラス(Fanmi Lavalas)党)によるデモが複数実施され,同日市内各地において混乱と被害がもたらされた。
(5)麻薬
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
7月7日 6月にハイチ国家警察は逮捕者42名,11キログラムのマリファナを押収したと述べた。
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 7月5日 上院における緊急事態宣言の承認(18名のうち,賛成17名)を受け,モイーズ(Jovenel MOISE)大統領は,ニップ県,南県,グランダンス県を緊急事態(90日間),及び全国を環境緊急事態(30日間)とする大統領令を発出した。
イ 7月10日及び11日 ハイチ軍(FAD’H)の新兵採用試験について国防省は,国家主権を取り戻すために新兵募集を行うと一般市民及び利害関係者に公表した。
ウ 7月26日 中央司法警察局は,4月7日午後にサンタールで起きた大統領随行団への襲撃未遂事件に関し,5名の容疑者を逮捕したとハイチ国家警察が公表したと述べた。
エ 9月2日 午後16時14分,トモンド(Thomonde)南西11km,ミルバレ(Mirebalais)北東13kmの中央高原を震源とするマグニチュード4.3の地震が発生。この地震の揺れは西県,アルチボニット県における数多くの都市部を含む3県で感じられたが,犠牲者を出すことなく,おさまった。
オ 9月4日 農業・天然資源・農村開発省(MARNDR)の海洋気象局(UHM)は,ハリケーン・イルマに対する警報(事前警報1(黄色))を発出した。
カ 9月5日 同ハリケーンは,ハイチ北部に雷雨,極めて強い突風,2~4メートルを超える高波の危険性があるとして,橙色レベルの予警報段階(中強程度の強さの影響のリスク)を発出した。
キ 9月6日 同ハリケーンにより,ハイチ北部を中心に赤色レベルの警報段階1(強・最高レベルの脅威)で,大雨,洪水,突風,強風,地すべり,高波,土砂災害の危険性と脅威を全国的に発出し,特に北県,北東県,北西県に警報喚起を促した。また,当局は全国の公立・私立の学校の休校,ハイチ赤十字及び市民保護局(DPC)の動員,各地方自治体に対する給付金などを公表した。
ク 9月8日 同ハリケーンは,ハイチに対する直接的な脅威ではないとして,警報を解除。なお,ハイチ北部における地滑り,洪水のリスクに対する警報を継続すると発表。被害状況は,旧ウアナミント=ダハボン国境橋の崩落,中央県のセルカーヌ川における行方不明者1名,北県カッパイシアンのサントフィロメーヌにおける家屋崩壊,ドンドンにおける樹木の落下により負傷者3名であった。
ケ 9月18日 農業・天然資源・農村開発省(MARNDR)の海洋気象局(UHM)は,ハリケーン・マリアに対する警報(事前警報1(黄色))を発出した。
コ 9月19日 同ハリケーンは,ハイチ全土に影響を与える可能性があり,ハイチ北部湾岸地域に大雨,高波,地すべり,洪水を引き起こす危険性があるとして,橙色レベルの警報段階(中強程度の強さの影響のリスク)を発出した。
サ 9月21日 同ハリケーンを受け,ハイチの北東県,北県,中央県及びアルチボニット県北部で,激しい洪水を引き起こす雷雨の可能性があるとして,橙色レベルの警報段階(中強程度の強さの影響のリスク)を発出した。また,ハイチ海運課(SEMANAH)は,ハイチ北部沿岸地域すべての沿海航行の禁止を発表した。
シ 9月22日 同ハリケーンは,ハイチから遠ざかり,直接的な影響をもたらさないため,警報を解除。雷雨による洪水,地すべりの可能性がある幾つかの県内の一部では,引き続き安全確保に努めるよう求めた。なお,本ハリケーンにより,北県の川の増水に巻き込まれ1名死亡,西県の落雷で2名が死亡した。
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし。
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,司法制度,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。
● 海外安全対策情報(2017年4月~6月)
● 安全情報のページへ
● 領事情報のページへ
● トップページへ