海外安全対策情報(2017年4月-6月)

平成29年7月20日
1 治安・社会情勢

(1)2017年4月~6月のハイチ治安情勢は,2017年2月7日をもって大統領選挙ほか一連の選挙に一区切りがつき新政権が発足したものの,政党間の不満や生活環境等の改善に向けた各種デモ等は引き続き発生し,貧困層等の生活レベル等においてはただちに改善があるわけでもないことから各種犯罪統計的には大きな変動はない。ギャング等の掃討作戦も奏功しているが引き続きスラム街を中心にギャングの闘争も発生しており留意が必要である。
 なお,2016年10月のハリケーン・マシューによる主に南部における被害に加え,新たに2017年4月20日~24日にかけての豪雨により家屋,農業,インフラ等への影響が再度,南部(レ・カイ市を含む南県の11市)において発生し甚大な被害を受けており,新政権発足までに継続していた高インフレ,通貨安の影響も新政権発足後も緩和されず,併せて燃料価格等の引上げもあったことから,引き続き社会的な不安,不安定に留意が必要となっている。

(2)13年間駐留してきた国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)は,ハイチ国家警察(PNH)と連携してハイチの安定化,治安維持に貢献してきたが,3月には撤収に向けた方向性が示され,4月には2017年10月15日に向けて撤収が国連安保理において決定された。今後同部隊のプレゼンスは縮小していくこととなる。右に合わせて,後継PKOである国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)の派遣も決定されているが,これに不満を持つ者もいることから同不満がどの様に治安に影響し得るか留意が必要である。

(3)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
 
 
 2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に増加傾向が見られる。

《主な報道・事件》
ア 4月7日 ジョヴネル・モイーズ(Jovenel MOISE)大統領を乗せた車列が,アルティボニット県からポルトープランスに戻る道中において,アルカイエ市を通過する際,襲撃に遭ったものの,大統領に被害はなかった。

イ 4月22日 身元不明の者が大統領府に侵入。ガリル(Galil:アサルトライフル)で武装し,CATチーム(CAT TEAM:ハイチの特殊部隊)の制服を着用し,大統領の執務室の前に到着していると思われる情報により,SNSが炎上した。

ウ 4月25日 ポルトープランス首都圏のベルビル(BELVIL)地区に居住するNGO家族の夫人が,何者かの侵入者により顔面と身体に酸をかけられる被害に遭い,病院に搬送され治療を受けるという事案が発生した。

エ 4月26日 ハイチ赤十字社の車両が同事務所の入口から数メートルのところで,武装した何者かによって発砲され,助手席に乗車していたハイチ赤十字社スタッフの1人が重傷を負った。

オ 5月25日 ペチョンビル市内のレストランマグドゥース(Magdoo's)にて夕食後の在留外国人グループが,レストランを出た通り上で強盗に襲撃され,スペイン系女性が銃弾を3発受け,病院に搬送される事件が発生した。

カ 5月30日 フランス人グループ(グアドループからのミッション関係者)がエール・フランス便でトゥサン・ルーベルチュール空港(ポルトープランス国際空港)に到着し,車両で移動した先のペチョンビルまであとをつけられ,物品を盗られる被害にあった。
 
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。

《主な報道・事件》
ア 5月8日 カナダ系ハイチ人が,Clercin交差点のUNIBANK(銀行)から出て自家用車に乗車したところで2発銃弾を受け死亡した。

イ 5月26日 市内下町(場所詳細不明)において,3人組の武装強盗により1台の車が襲撃され,金品の強奪にあった。銃撃により乗車していた5人の内,男性は死亡,英国国籍女性は銃弾を受け負傷した。
 
(3)強姦 
《傾向》発生数に増加傾向が見られる。

《主な報道・事件》特になし。
 
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》発生数に減少傾向にある。

《主な報道・事件》
ア 5月9日 早朝の数時間に渡り,ハイチ人商人と運転手は,ヒマニ=マルパス(Jimani-Malpasse)間国境のマルパス国境入り口(ハイチ側)において,火をつけたタイヤ,岩,車体による通行止めを行い,両国間の日用品を輸送するトラックと両国間を行き来するバスの往来を遮った。同通行止めは,ハイチ税務局がドミニカ共和国からの輸入品に対して,20,000グルドから60,000グルドの間で任意で課税しており,正常に課税評価が行われていないことに対する抗議活動である。

イ 5月12日 カデ(Pierre Josue Agenor CADET)国民教育・職業訓練大臣は,下院議会における教育委員会で,当国の教育制度に影響を与えている多様で繰り返し起きる課題(教員及び学生によるデモとストライキ,教員の任命,賃金未払い等)に関する答弁に応じた。

ウ 5月19日 下請け繊維業に従事する数千人の労働者は,燃料価格,公共交通の運賃,生活費の上昇に対応するため,最低労働賃金を350グルド(注:約600円,1米ドル=65グルド)から800グルドまで引き上げ,飲食費及び交通費への補助金と社会住宅の建設等の福利厚生を訴えるデモを行った。
 
(5)麻薬 
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。

《主な報道・事件》
6月21日 アルトナーガ(Cecilia M. ALTONAGA)米国地裁判事は,マイアミ地方裁判所で,(ギー・フィリップに対して)150万米ドル相当の麻薬密売及びマネーロンダリングのため,実刑9年の懲役を求刑したと報じられた。
 
(6)その他 
《主な報道・事件》
ア 4月17日 オノレ(Sandra HONORE)国連安定化ミッション代表は,同本部における記者会見において,新たな使命,体制,任務ではあるが,国連はMINUJUSTHへの移行と共にハイチ国内に残る旨発表した。

イ 4月20日 上院議会において,ドゥニ国防大臣は国防省の行程表に則って「500名の軍人を募るための行政プロセスを既に開始」し,草案をモイーズ(Jovenel MOISE)大統領及びラフォンタン(Jack Guy LAFONTANT)首相に提出したと明かした。

ウ 4月27日 ガリー・デロジエール(Gary DESROSIERS)PNH主任捜査官兼副報道官は,記者会見において,25日から「ハリケーン作戦」を実施し,犯罪対策と山賊の掃討を開始したと述べた。

エ 5月5日 モイーズ(Jovenel MOISE)大統領の運転手であるオドニ(Livingston ODNI)(別名:ロロ)(36歳)は,4日,クレルシーヌ(Clercine)の自宅において,死亡しているところ発見されたと報じた。

オ 5月11日 ウルグアイ軍とペルー軍による混成部隊(URUPERBAT)の撤収について報じた。

カ 6月10日 南県カバイヨン(Cavaillon)市においてバス事故が発生し,多数の死傷者を出たしが,当国市民保護局及び当地警察に照会した結果,邦人被害者はいなかった。

キ 6月16日 午後10時,地震学技術ユニット(UTS)は,ニップ県を中心として,マグニチュード2~3の小規模な地震を確認したほか,デルマ及びペチオンヴィルで微弱な揺れを確認したものの,被害はなかった。

ク 6月20日 午後3時,市民保護局(DPC)は,グランダンス県のジェレミー市において僅かな揺れを確認した後,アンス・ア・ヴォー(Anse-a-Veau)においても揺れを確認し,短時間の揺れであったものの,(住民に)混乱を招いたと述べた。米国地質学研究所(USGS)は,同地震は,マグニチュード4.5,震源の深さ10キロメートルで,北県ジェレミー市から84キロメートル,北西県ポルトープランスから216キロメートルの位置で発生したと指摘した。

ケ 6月20日 国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)は10月の撤収に向け,南部支所(レカイ市に所在し,南県,グランダンス県,及びニップ県を管轄)を閉鎖し,同月15日,北部支所(北県,北東県,アルティボニット県,北西県管轄)の閉鎖式典の際,オノレ(Sandra HONORE)SRSG/MINUSTAH代表は,同ミッションの完全な撤収に向けて2015年6支所,2016年2支所,2017年2支所が閉鎖されたと述べた。

コ 6月20日 グテーレス(Antonio GUTERRES)国連事務総長は,米国のシーラン氏を国連ハイチ特使に任命した。国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)の声明によると,シーラン特使は「ハイチにおけるコレラ流行の影響を削減し,2030年に向けた持続可能な成長計画を実現する国家による取り組みの支援」のため,国連の新たなアプローチ実施を推進すると述べた。
 
 
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
 
 
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。

《主な報道・事件》特になし。
 
 
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
 
 
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,司法制度,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
 
 
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。

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