海外安全対策情報(2018年7月~9月)

1 治安・社会情勢

(1)2018年7月~9月のハイチ治安情勢は,以前より計画されていた国家財政健全化のための燃料費等の値上げが7月6日に公表されたことによる国民等の反発により,首都圏ほかにおいて一時大規模な抗議行動(広範囲に渡る道路封鎖や略奪行為)が発生した。その後,モイーズ大統領が声明を発し,ラフォンタン前首相により燃料価格の引上げは実施しないと取下げたことを受け,9日にかけて沈静化に向かい現状は概ね平常に戻ったが,騒擾の引責によりラフォンタン内閣が総辞職した。8月5日モイーズ大統領は,セアンレンメン・アイチ党首を新首相に指名し,9月17日セアン首相による施策方針演説を上下両院にて行い,承認を得て,正式に新首相として任命されセアン内閣が発足した。
 現状はその影響もあり,新政権が発足したばかりの不安定な時期でもあり,与野党間の不満や生活環境等の改善に向けた各種デモは引き続き発生し,最近は特に,政府によるペトロカリベ基金の流用疑惑に関して追求と抗議の運動「ペトロカリベ・チャレンジ」に関連した集会やデモも併せて実施されており,今後の情勢に注視が必要である。
 ハイチ国家警察(PNH)によるスラム街を中心としたギャング等に対する掃討作戦も奏功しており,それに加え新たに取締りを実施し,治安維持の強化を計ってはいるが,その反発による警察官や一般市民が巻き込まれる事案等も引き続き多く発生している。
 また最近では,特に首都ポルトープランス市マルティッサン(Martissant)地区周辺においてギャング同士の抗争による銃撃戦等が過熱している。その影響によりマルティッサン地区近辺を通る国道2号線沿いや周辺でも同様の通行者を巻き込む事件が発生しているため,白昼であっても細心の注意が必要になっている。その他,ベル・エール(Bel Air)地区やカルフール・フイユ(Carrefour Feuille)地区,カルフール(Carrefour)市周辺においても,殺人・強盗・誘拐・強姦等の凶悪犯罪やギャング同士による銃撃戦等の抗争も引き続き発生しているため,ギャング等が潜伏しているスラム街等に近づかないよう特に注意が必要になっている。
 なお,2016年に発生したハリケーン・マシューによる主に南部における被害に加え,昨年の4月にかけての豪雨により家屋,農業,インフラ等への影響が再度,南部(レ・カイ市(Les Cayes)を含む南県の11市)に甚大な被害を与えた。また昨年秋のハリケーンシーズンには,直撃はなかったものの,イルマ,マリアの影響が主に北部で広範囲に及ぶ等,市民の生活状態は極めて厳しく,今後も不満によるデモや暴力行為等治安状況の悪化を引き続き注視する必要がある。

(2)昨年の10月16日に,MINUSTAHの後継PKOである国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)が設置された。MINUSTAHの終了と同時に同軍事部門関係者は全て撤収し,ほぼ合わせるようにハイチ国軍が再編成されたものの,現在のところはいずれに関しても大きな反響はみられていない。

(3)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口が最近は特に多くみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は極めて高く,拳銃強盗は,先ず被害者を撃ち,身動きがとれなくしてから物をうばう手口も多発するなど凶悪な例もみられ注意が必要である。

 

2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向

(1)強盗
《傾向》不明
《主な報道・事件》
ア 8月20日夜9時頃 デルマ(delmas)75付近を走行中のドイツNGO団体が武装集団の襲撃に合い所有車が強奪された。
イ 9月11日 北県サン・ルイ(Saint Louis)に所属していた警察官は,南県レカイ(les Cays)にある店舗へ強盗した容疑で逮捕された。
ウ 9月25 デルマ(delmas)48付近において,現地ハイチ人女性が銀行から出たところ武装集団による強盗にあった。

(2)殺人
《傾向》不明
《主な報道・事件》
ア 7月2日 行方不明になっていたラジオメトロポール(Radio Metropole)社長の息子が遺体となってペチョンビル(Petion-Ville)市で発見され,ハイチ国家警察は,22歳の容疑者1名を逮捕した。
イ 7月3日 マルティッサン(Martissant)地区グラン・ラヴィン(Grand-Ravine),ティ・ボワ(Ti-Bwa)にてギャング同士の抗争が発生し,少なくとも住宅5軒が放火されたほか,銃撃により数人のけが人と死亡者がでた。
ウ 7月14日 内務省移民検査官が,カッパイシアン(Cap Haitian)の南にある街で銃に撃たれ死亡した。
エ 7月31日 アルカイエ(Arcahaie)の役所職員2人がギャンググループによって殺害された。
オ 8月6日 アルティボニット(Artibonite)県のプチ・リヴィエール(Petit Riviere)で,警察のパトロールに対抗して編成された集団による襲撃で,警察官1人が死亡した。
カ 8月13日 米国テキサス州から訪れたハイチ系アメリカ人(65歳)が空港到着後,空港からでたところを3人の男性に殺害された。
キ 9月2日 ジェレミー(Jeremie)で警察官にて26歳の青年が殺害され,警察署長は容疑者の警察官を逮捕したと公表した。

(3)強姦 
《傾向》不明
《主な報道・事件》特になし。

(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》不明(投石ほか,警察と衝突するケースが増えている)
《主な報道・事件》
ア 7月5日 ペチョンビル(Petion-Ville)市にある大統領の住宅付近(Pelerin)の住人に対し,住居の退去命令を実施したことによる反発で,デモ等が行われた。
イ 7月6日 大統領の住宅があるこの地区の住人は,翌日も2日目の抗議活動を行っている。ペチョンビル(Petion-Ville)市とその他の地区を繋ぐ道には朝早くからバリケードが設置された。
ウ 7月6日 ハイチ政府による翌7日から石油製品大幅値上げ施工の公示に対し,ポルトープランス(Port-au-Prince)市・ペチョンビル(Petion-Ville)市等の首都圏において,反政府勢力による反対運動の呼びかけにより大規模なデモが発生した。
エ 7月9日 アンシュ(Hinche)とカッパイシアン(Cap Haitian)を結ぶ道路がロードブロックされた。その地区の青年が集結し,燃料費の値下げと大統領の退任を求めるデモが実施された。
オ 7月25日 RNNDH(人権保護の全国ネットワーク)の6日~8日の暴動の報告書で,約20人が命を落とし,子供のけが人も少なからず1人は出たと発表した。死者に関しては,ペチョンビル(Petion-Ville)市5人,デルマ(delmas)市4人(うち1人が警察官),西県のその他の地域11人であった。
カ 7月30日 複数の団体がストライキを呼びかけた。目的は,大統領の辞任,物価上昇への不満,暴動によって捕まった人の釈放,ペトロカリベ基金の公正,最低賃金1,000グルドへ引き上げ等。
キ 8月6日 レオガン(Leogane)の国道2号線上の橋で投石やタイヤが燃やされる暴動が発生した。目撃者の証言によると,ある運転手が警察に身分証明書提示を求められたものの,拒否したことから暴動に繋がった。
ク 8月30日 ペトロカリベ資金の不正利用に対する平和的なデモが激化した。
ケ 9月9日 2,000人以上が汚職撲滅とペトロカリベ資金の透明化を求めてデモに参加した。デモ隊はラリュ(Lalue)地区でタイヤを燃やし,バリケードを設置した。警察はマリオットホテルに向かおうとしていたデモ隊に催涙ガスを使用し鎮圧した。
コ 9月10日 アルカイエ(Arcahaie)でペトロカリベ資金の透明化を要求する暴力的なデモが起きた。デモ隊はタイヤを燃やし,バリケードを設置した。身元不明の10数名は,銃やなた等で通行しようとするものを脅し,国道2号線が少なくとも2時間以上封鎖された。その際,警察当局の介入は見られなかった。
サ 9月27日 いくつかの労働組合が,9月28日,30日,10月5日(世界教師デー)の3日間,労働環境の改善等を求めてデモをすると公表した。

(5)麻薬 
《傾向》不明
《主な報道・事件》
 8月17日 3人(うち1人は察警官)が麻薬取引の疑いで尋問を受け,2kgのコカインと思われる粉末,9mmの拳銃,充電器,タイヤ等を押収した。

(6)その他 
《主な報道・事件》
ア 7月10日 当地ル・ヌーベリスト紙は燃料費値上げ発表の前日,政府はハイチ国家警察に知らせていなかった。その結果「不意を突かれ,対策を打つことができなかった。」旨ハイチ国家警察が表明。
イ 7月11日 略奪,放火,少なくとも4人(内2人は警察官)の死亡者が出た旨報じられた。
ウ 7月12日 6日と7日の暴動の後,複数の企業や私有財産の損害,略奪,放火等行為の容疑で64人が逮捕された。
エ 7月13日 国立救急センター(CAN)によると,3日間にわたった燃料費値上げの反対暴動により,国立救急センターは100人以上の患者(うち約20人は銃弾によるけが人)をハイチ国立大学病院あるいは平和病院(Hopital de la Paix)へ搬送した。
オ 7月13日 数日前の暴動を踏まえて,各警察関係者へ休暇取得を制限。13日(金)と14日(土)は,警察関係者全員が警戒待機するよう命じられ,出動しない者は厳しく罰せられるとした。
カ 7月19日 カパイシアン(Cap Haitian)のギャングメンバーから,2016年に殺害された警察官の武器(9mmの拳銃)が発見された。
キ 
ク 8月9日 「ストップアクシデント」の国立救急センター(CAN)及びハイチ赤十字との共同で発表した報告書によると,6月29日~8月5日の37日間で,国内で少なくとも151件の交通事故が発生した。被害者は合計333人にのぼり,うち61人が死亡,272名が負傷した。
ケ 8月18日 ベラデール(Belladere)の国境で6人のハイチ人がドミニカ共和国の軍に銃で撃たれ負傷した。大統領はこの事件に対し,ドミニカ共和国人によるハイチ人への攻撃として非難した。
コ 8月28日 デルマ(delmas)40Bにある上院議長の自宅で,身元不明の複数名が,爆発物を投げ,数発発砲した。けが人はでなかったものの,銃弾は正面玄関と車の窓ガラスにあたった。
サ 8月31日 身元不明の武装集団が上院議員の車に発砲した。上院議員は無事であったが,運転をしていたUDMO(県別治安維持部隊)の警察官が頭に怪我を負い病院に運ばれた。
シ 9月1日 ポール・ド・ペ(Port-de-Paix)とゴナイーヴ(Gonaives)を結ぶ道で,1台のバスが横転する事故が発生した。原因は不明だが,市民保護局によると,3名の男性が死亡,7人が重傷を負い病院に運ばれた。ほか8人が軽傷をおった。
ス 9月5日 警察の取締りの際,ペチョンビル(Petion-Ville)市プラスボワイエ公園前の通りで,2名の容疑者が警察と銃撃になり死亡した。
セ 9月16日 ハイチ国家警察によると,マルティッサン(Martissant)でミニバスが武装集団に襲撃され2名が負傷し,そのうち1名が警察官であったことを公表した。
ソ 9月20日 大統領はマルティッサン(Martissant)地区でのギャングの抗争に対し,治安回復の措置をとるよう警察当局へ呼びかけ,警察当局はマルティッサン地区の治安維持を目的として取締りを強化することを発表した。

 

3 テロ・爆弾事件発生状況

 当国においては当該事件の発生は認知されていない。

 

4 誘拐・脅迫事件発生状況

《傾向》不明
《主な報道・事件》特になし。

 

5 対日感情

 対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。

 

6 日本企業の安全に係わる諸問題

 日本製品が多く入っており(特に自動車),日本企業へのイメージは高信頼度・高品質と悪くないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,市場規模もさることながら,司法制度や治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が課題となっている。

 

7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置

 当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。



● 海外安全対策情報(2018年4月~6月)
● 安全情報のページへ
● 領事情報のページへ
● トップページへ