海外安全対策情報(2018年4月~6月)

平成30年8月1日

1 治安・社会情勢

(1)2018年4月~6月のハイチ治安情勢は,新政権発足後一年が経過したものの,与野党間の不満や生活環境等の改善に向けた各種デモは引き続き発生し,貧困層の生活レベルにおいてはただちに改善があるわけでもないことから各種犯罪統計的には大きな変動はない。ハイチ国家警察(PNH)によるスラム街を中心としたギャング等に対する掃討作戦も奏功しており,それに加え新たに取締りを実施し,治安維持の強化を計ってはいるが,その反発による警察官や一般市民が巻き込まれる事案等も引き続き多く発生している。
 また最近では,ハイチ最大のスラム街である首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市ベル・エール(Bel Air)地区及びマルティッサン(Martissant)地区やカルフール・フイユ(Carrefour Feuilles)地区,カルフール(Carrefour)市周辺において,殺人・強盗・誘拐・強姦等の凶悪犯罪やギャング同士による銃撃戦等の抗争が発生し過熱化しており,ギャング等が潜伏しているスラム街等に近づかないよう特に注意が必要である。なお,2016年に発生したハリケーン・マシューによる主に南部における被害に加え,2017年の4月にかけての豪雨により家屋,農業,インフラ等への影響が再度,南部(レ・カイ市(Les Cayes)を含む南県の11市)に甚大な被害を与えた。また2017年秋のハリケーンシーズンには,直撃はなかったものの,イルマ,マリアの影響が主に北部で広範囲に及ぶ等,市民の生活状態は極めて厳しく,今後も不満によるデモや暴力行為等治安状況の悪化を引き続き注視する必要がある。また,2017年の新政権発足後一定期間を経た現在も高インフレ率通貨安の経済的な厳しい状況は継続しており,財政健全化の観点から近々燃料価格を引上げる方向となっている。特に一般労働者層や低所得者層に多大な影響を及ぼし,社会不安の要因ともなっている。このような状況に対する不満も背景に,人口の大部分を占める貧しい人々は,デモ等で不満をぶつけたり,犯罪に訴える場合も少なく,また反政権勢力の示唆行動と合流する等不安定要素となっていることから,社会的な不安・不安定に留意が引き続き必要となっている。 

(2)2017年10月16日に,MINUSTAHの後継PKOである国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)が設置された。MINUSTAHの終了と同時に同軍事部門関係者は全て撤収し,ほぼ合わせるようにハイチ国軍が再編成されたものの,現在のところはいずれに関しても大きな反響はみられていない。  

(3)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口が最近は特に多くみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は極めて高く,拳銃強盗は,先ず被害者を撃ち,身動きがとれなくしてから物をうばう手口も多発するなど凶悪な例もみられ注意が必要である。      
 

2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向

(1)強盗
《傾向》不明
《主な報道・事件》
ア 4月11日 人権保護組織(RNDDH)の事務所が武装した複数犯に襲われた。
イ 5月4日 プチ・ゴアーブ(Petit-Goave)地区バレット(Barettes)での取締りで,地元住民を襲い現金を強盗した疑いで6人の容疑者が逮捕された。(女性3人,男性3人,いずれも首都ポルトープランス市出身)
ウ 5月10日夜 ポルトープランス(Port-au-Prince)市にあるハイチ電力(EDH)の中央事務所が身元不明の何人かに襲撃され,この襲撃によって事務所建物が被害を受け,その地区はパニック状態になった。
エ 5月11日 強制老齢保険(ONA)の労働組合長の妻が車内にいるところを武装集団により銃撃された。
オ 5月16日 先週アンシュ(Hinche)で2人殺害された事件の容疑者2人を逮捕し,ハイチ国家警察は,窃盗,強盗,重罪,軽罪に対する取締りを強化すると発表した。ハイチ国家警察は,アンシュの住民を殺害し恐怖で脅かす恐ろしい犯行グループの効力を弱めるためには住民の協力が必要だと述べた。
カ 5月16日 ペチョンビル(Petion-Ville)市の住人が,犯罪グループの被害者になっている。朝早くに家を出る商人たちが,人影の少ないところで強盗被害にあっている。(Girardo, Bois-Moquette, Meyotte, Jalouzi地区等が標的となっている。)住民の安全を保証するためにも,警察当局の取締りが必要と報じた。
キ 5月24日午前 身元不明の武装集団がレオガン(leogane)(ポルトー・プランス市の南)にある保健センターに押し入り発砲し,現場はパニック状態に陥ったほか,何人かのけが人がでた。  

(2)殺人
《傾向》不明
《主な報道・事件》
ア 4月9日 教育大臣の姉がバイクに乗った覆面の犯人に銃で複数回撃たれ病院に搬送されたが死亡した。
イ 4月19日 野党勢力によるデモで1名がハイチ国家警察の警官に銃で撃たれ死亡した。
ウ 4月28日 カパイシアン(Cap Haitian)のカフェトリオ(Cafe Trio)で行われたペトロカリベに関する会議で催涙ガスによる攻撃をうけ1人が死亡し,そのほか10人程度が体調を崩した。
エ 5月10日 プチ・ゴアーブ(Petit-Goave)地区バレット(Barettes)の住民によるデモでハイチ国家警察・治安維持介入部隊(CIMO)によって鎮圧されたが,デモ参加者であった若い青年が背中を銃で撃たれ,その場で死亡した。そのほか2人も銃で撃たれけがを負った。
オ 5月13日夜9時頃 レオガン(leogane)での治安が不安定な状況。レオガンの中心街で男性1人がオートバイに乗った人物に銃で頭を撃たれ死亡した。事件現場は,電気が通っている時でも常に薄暗い道であるため,犯行グループにとって都合の良い場所であり,事件が起きたのは巡回パトロールの数分後のことだった。
カ 5月14日 キャバレ(Cabaret)で武装グループによる襲撃で3人の死者,5人の負傷者が出た。警察署から数メートルのところで,武装グループが両替所を強盗し,すべての方向に向かって発砲したと,市長がラジオで話し,警察はこの襲撃に対して対抗しなかったと述べた。
キ 5月15日 レオガン(leogane)で治安悪化,無力なハイチ国家警察と報じた。ギャンググループが住民の生活を脅かしているレオガンで,昼夜を問わないロードブロック,窃盗,殺人事件が数週間前から日常行為となっている(特段,9号線上,ナットコムの地区,Chatuley,レオガンの市場,Nan Timo,Darbonne,Kann Boule地区)特に,モトタクシー運転手やその乗客を待ち伏せし,お金やバイクを盗むケースがある。そのほか,モトタクシー運転手のふりをして乗客から現金を奪い取ることもある。これらの要求に対し断る者は,暴力を振るわれ,けがを負わされ殺害された。
ク 5月16日 グラン・ラヴィン(Grand-Ravine)やその他で行われた取締りの結果,10人のギャングメンバーが殺された。ハイチ国家警察は治安部隊との対立の際に殺害したと説明。2018年4月12日に開始された取締りではこのギャングメンバーのうち20人の逮捕にいたった。これらの犯罪者は銀行利用客を狙った強盗に関わっていたと公表した。
ケ 6月25日 ハイチ国家警察は,キャバレ(Cabaret)の警察署内に停車中の車内で同警察署員が遺体となって発見された事件につき刑事殺害事件として捜査を開始したと公表した。

  (3)強姦 
《傾向》不明
《主な報道・事件》
5月10日 未成年者に対する性的暴行が3日に1件以上発生している。中央司法警察局(DCPJ)による4月の取締り報告で,ハイチ国家警察報道官補は,少なくとも12人が性的暴行の疑いでDCPJに逮捕されたことを公表した。

  (4)デモ
《傾向》不明(投石ほか,警察と衝突するケースが増えている)
《主な報道・事件》
ア 5月10日 マルティッサン(Martissant)の教師養成学校(CEFEF)の生徒がデモで投石をしたりタイヤを燃やしたりした。生徒たちは教育・職業訓練省に対して責任をもって行動するよう要求した。
イ 5月21日 首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市のソナピ(SONAPI)産業団地で,同団地内の工場に勤める労働者及び労働組合が中心となり,最低賃金を1,000グルドに引きあげるデモを実施した。
ウ 5月28日早朝 デルマ95で,住民たちが道路の改修工事を要求した激しいデモが起きた。抗議者たちと状況抑圧のため介入した警察当局との間で激しい対立となり投石される一方で,催涙ガスがまかれ,その地域の経済活動は麻痺した。抗議者たちは,要求が満たされない限りデモを続けると脅した。
エ 6月11日 産業団地労働組合らは,12日~15日に予定されている4日間のデモに参加するよう呼びかけた。最低賃金1,000グルド,福利厚生及び2009年の最低賃金に係る修正法に対する抗議活動のせいで解雇になった人たちの職務復帰を要求した。

  (5)麻薬 
《傾向》不明
《主な報道・事件》特になし。

  (6)その他 
《主な報道・事件》
ア 4月3日 ハイチ軍兵士3人の逮捕について報じた。アルティボニット(artibonite)県アンス・ルージュ(Anse-Rouge)のナイトクラブで銃器を使用し,2人を負傷させた。
イ 4月9日 マルティッサン(Martissant)でギャング同士の抗争があり,警察当局が事態を抑えるよう大規模な治安維持部隊がその地区に配置された。なお,その影響により周辺に住むスラム街の住民が恐怖のあまり精神障害を引き起こし,多くの住民が避難した。
ウ 4月9日 報道省の記者会見で,地質エンジニアで鉱山エネルギー局(BME)の局長は,2018年最初の四半期(1月~3月)のハイチで起きた地震に関するまとめを公表した。BMEの地質科学部署(UTS)は,およそ20回ものマグニチュード3.1~4.6の地震を記録。確認された地震の61%は水深10Km~25Kmのところで発生した。
エ 4月10日 国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)マンデート延長について報じた。
オ 4月10日 内務省はハイチ国家警察との共同で行った取締りで,内務省の付近で活動していた偽造文書を発給していた2つの偽造グループを壊滅させ10数人を逮捕した。
カ 4月16日 3月初旬から4月10日までに行われた国境の治安強化計画の際,この約1か月半の間に,より良い生活を目指して不法に国境を越えようとした18,493人がドミニカ共和国の軍隊によって,4,912人がハイチ国境治安特別部隊(CESFRONT)によって,合計23,405人のハイチ人が自国に送り戻された。
キ 4月24日 西県と中央県で,昔の軍隊解体を求める人たちを立ち退かせるため,ハイチ国家警察は取締りを行った。
ク 4月27日朝 中央県の国境付近の交差点で2台のモトタクシーが激しく衝突し,2名が死亡,1名が重傷を負った。
ケ 4月27日 ティオット(Thiotte)で行われたハイチ国家警察の取締りは失敗に終わった。14人の警察官と2台の警察車両が,地元住民に攻撃され,現場から逃げ去ったようすを報じられた。
コ 5月1日 マルティッサン(Martissant)地区でグランラヴィン(Grand Ravine)とティブワ(Ti Bwa)のギャンググループの新たな抗争が発生し,住民の多くは恐怖におびえながら家に閉じこもった。
サ 5月10日 プチ・ゴアーブ(Petit-Goave)地区バレット(Barettes)の国道2号線で盗まれた警察や住民の武器が押収された。
シ 6月4日 在ハイチ米国大使館は,ハイチに住む,もしくは観光,ビジネス等の目的で来訪するアメリカ人に対し,空港付近の治安の悪化を説明するとともに,注意喚起を行った。大使館は,空港を出た米国人を狙う武装強盗が多発していることを強調した上で,予防措置を取るよう呼びかけた。
ス 6月4日夜 水曜日から木曜日にかけての夜,クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)の刑務所から3人が格子をのこぎりで切って脱走した。
セ 6月11日 白昼ポルトープランス(Port-au-Prince)市の南部サントクレール(Ste Claire)で武装グループが銃を発砲した。この地区は,ギャンググループのリーダー同士が縄張り争いをする危険で地獄のような場所となっている。
ソ 6月13日 ハイチ国家警察は23周年を祝い,1995年6月12日から2018年6月12日まで警察官の人数をあらゆる部隊も含め358人から16,941人になったと公表した。
タ 6月27日 JILAP(司法・平和司教委員会)となる組織は,数週間前から,首都圏における治安の悪化と緊張の高まりが増していると公表した。(2018年6月1日から18日の間で,46人が銃で撃たれ死亡している。(ポルトープランス(Port-au-Prince),マルティッサン(Martissant),デルマ(delmas)で37人,クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)で4人,カルフール(Carrefour)で5人))  
 

3 テロ・爆弾事件発生状況

当国においては当該事件の発生は認知されていない。    
 

4 誘拐・脅迫事件発生状況

《傾向》不明
《主な報道・事件》特になし。  

 

5 対日感情

対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。      
 

6 日本企業の安全に係わる諸問題

日本製品が多く入っており(特に自動車),日本企業へのイメージは高信頼度・高品質と悪くないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,市場規模もさることながら,司法制度や治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等の公共サービスや全般的なインフラ環境が課題となっている。  
 

7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置

必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP及びFB上に掲載すると共に領事メール一斉配信を実施している。



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