海外安全対策情報(2018年1月~3月)
平成30年4月10日
1 治安・社会情勢
(1)2018年1月~3月のハイチ治安情勢は,新政権発足後一年が経過したものの,与野党間の不満や生活環境等の改善に向けた各種デモは引き続き発生し,貧困層の生活レベルにおいてはただちに改善があるわけでもないことから各種犯罪統計的には大きな変動はない。ハイチ国家警察(PNH)によるスラム街を中心としたギャング等に対する掃討作戦も奏功しており,それに加え新たに取締りを実施し,治安維持の強化を計ってはいるが,その反発による警察官や一般市民が巻き込まれる事案等も多く発生しているため,ギャング等が潜伏しているスラム街等に近づかないよう特に注意が必要である。なお,2016年に発生したハリケーン・マシューによる主に南部における被害に加え,昨年の4月にかけての豪雨により家屋,農業,インフラ等への影響が再度,南部(レ・カイ市を含む南県の11市)に甚大な被害を与えた。また昨年秋のハリケーンシーズンには,直撃はなかったものの,イルマ,マリアの影響が主に北部で広範囲にあったため,引き続き市民の生活状態は極めて厳しくなることが予想され,今後も不満によるデモや暴力行為等治安状況の悪化を注視する必要がある。また,2017年の新政権発足後も高インフレ率通貨安は継続し,燃料価格等の引上げ等の財政健全化の方向性が,特に低所得者層に多大な影響をおよぼし,社会不安の要因ともなっている。このような状況に対する不満も背景に,人口の大部分を占める貧しい人々は,デモ等で不満をぶつけたり,犯罪に訴える場合も少なく,また反政権勢力の示唆行動と合流する等不安定要素となっていることから,引き続き社会的な不安・不安定に留意が必要となっている。(2)13年間駐留してきた国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)は,PNHと連携してハイチの安定化,治安維持に貢献してきたが,昨年10月15日にその任務を終了した。同16日には,後継PKOである国連ハイチ司法支援ミッション(MINUJUSTH)が設置された。MINUSTAHの終了と同時に同軍事部門関係者は全て撤収し,ほぼ合わせるようにハイチ国軍が再編成されたものの,現在のところはいずれに関しても大きな反響はみられていない。
(3)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口が最近は特に多くみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は極めて高い。
2 殺人・強盗等凶悪犯罪及び一般犯罪の事例
(1)強盗《主な報道・事件》
ア 1月4日 ペチョンビル(Petion-Ville)市内中心部のスーパーマーケット付近の路上を歩行中のカナダ人2人組が強盗にあったが,偶然付近に居合わせた政府関係者のボディガードにより犯人を銃撃し,2人組の犯人のうち1人が死亡した。
イ 2月8日 ペチョンビル(Petion-Ville)市において,現地ハイチ人女性が銀行から出たところ,バイクに乗った複数名により強盗にあった。
ウ 2月14日 2人のマルティニーク人がデルマ(Delmas)市で強盗による襲撃を受け,所持金全部と身分証明書を奪われた。その現場に居合わせたハイチトップモデルのうちの一人の目撃情報では,事件現場には警察官がいたことを確認しており,ハイチ国家警察が役に立たないとラジオメトロポールの放送で非難をした。
エ 3月4日 ハイチ国家警察は,米大所有の車1台とその他ペギー・ビル(Peguyville)のコルレット(Corllette)地区にあった車を襲撃した3人を逮捕した。容疑者は,運転手に通行料を要求した後,棒と鉈で襲撃した。
オ 3月10日 ニップ県ミラゴアンヌ(Miragoane)市で銃撃事件が発生し5人の怪我人がでた。
(2)殺人
《主な報道・事件》
ア 2月20日 デルマ(Delmas)83に住む警察官が家に帰るところ,身元不明の集団に襲われる殺人未遂事件が発生した。
イ 2月23日夜 ポルトープランス国際空港で殺人事件の容疑者が逮捕される。25歳の女性がハイチ系カナダ人によって銃撃され殺害された。容疑者は24日,アメリカを経由しカナダへ行く予定だった。複数の航空会社の調べた情報によって,容疑者はマイアミに向かう飛行機内で発見された。
ウ 3月6日 国家司法平和司教委員会(JILAP)は,首都圏において1月から2月の2か月間で,55人が死亡したことを公表した。(うち20名は銃撃による死亡)
エ 3月14日 2名のハイチ人と共犯でドミニカ人の農業経営者夫婦を殺害した容疑のハイチ人がジャクメル(Jacmel)の警察署に投獄された。
(3)強姦
《傾向》不明
《主な報道・事件》
3月5日 西県プチ・ゴアーブ(Petit goave)の警察署は,17歳の少女への監禁と強姦した容疑者へ令状が発出されたと公表した。
(4)デモ(主な報道・事件)
《主な報道・事件》
ア 1月9日 野党勢力による2018年1度目のデモが行われた。デモ隊に対し警察によって催涙ガスがまかれる等の対策がされた。催涙ガスがまかれたことによって,デモ隊はパニック状態になりその後,SEナンバー(国家公務員),ITナンバー(国際機関臨時登録ナンバー)の政府関係機関車両や一般車を含むいくつかの車のフロントガラスが割られ,また何名かのデモ隊はスーパーマーケットや店舗などに投石した。
イ 3月5日,西県プチ・ゴア-ブ(Petit goave)の高校生が,大勢の中学生とともに道路で新たにデモを実施した。
ウ 3月7日 プチ・デザリーヌ党は,14日,15日,16日の3日間主要都市でデモを実施した。(初日は南県レ・カイ市(Les Cayes),二日目は西県・首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市(Port-au-Prince),三日目は北県カパイシアン市(Cap-haitien)
エ 3月12日 3週目にはいる西県プチ・ゴア-ブ(Petit goave)の高校生によるデモにより多くの被害が発生した。
オ 3月20日 野党勢力により23日,24日の2日間,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市でデモを実施した。
(5)麻薬
《傾向》不明
《主な報道・事件》
3月7日 北西県ポー・ドゥ・ペ(Port-de-Paix)にて3名(うち1名はアメリカ国籍)が,大量の武器や弾薬を不正にハイチに密輸した疑いで逮捕され,武器や弾薬,移動用の車両2台を押収した。
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 1月11日 ウアナマンテ(Ouanaminthe)-ダハボン(Dajabon)のドミニカ共和国との国境付近において118名の警察官による取締りが行われた。
イ 1月16日 先月21日ペチョンビル(Petion-Ville)市内において銀行からの帰宅途中に強盗による銃撃で神父を死亡させた4人の犯人が逮捕され,2台のバイクと38口径の銃も押収された。
ウ 1月16日 ハイチ国家警察による2017年の総合評価。逮捕者:588人,指名手配:329人(うち多くがギャング関係),留置:420人。押収品:コカイン48kg,マリファナ954kg,現金100,000ドル相当(グルド,ユーロ,米ドルなど),車両66台(うち20台がバイク),銃92丁,船2隻,住居3軒を摘発した。
エ 2月12日 12日から13日にかけての夜におきた火災により,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市でもっとも象徴的な公共市場の一つであるマルシェ・オン・フェールが大損害を受けた。
オ 2月12日 ハイチ国家警察は首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市で行われたカーニバル初日に係る評価を公表し,治安対策の面で1日目は成功したと報じられた。(130人の怪我人,11人の逮捕者)
カ 2月14日 南県アンクイン(Aquin)の道路でバスとタプタプ(当地の乗り合タクシー)の衝突事故で7人が死亡(うち1人が女性),2名の怪我人が出たと市民保護局によって報じられた。
キ 2月18日 首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市の市場で別の新たな火災が発生した。12日の公共市場の火災に続き,約1週間後の日曜日の日中,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市のダウンタウンにある港の市場で火災が起きた。
ク 2月18日 ハイチ西部にあるフォン・ヴォレット(Fonds Verrettes)の近くで,ポルトープランス(Port-au-Prince)と南東県のベランス(Belle-Anse)をつなぐ公共バスが転倒し被害者が30名におよぶ大きな交通事故が発生した。30代の母親女性が一名亡くなり,29人の乗客が怪我を負った。市民保護局(DPC)の最新の情報によると,被害者の中には幼児も含まれていたと報じられた。
ケ 2月20日 連続して首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市の市場で起きた火災についてカルフール(Carrefour)の市長は助けを求めた。首都圏では,24時間水を供給できる消火栓が3個あり,そのほかに123個の消火栓もあるものの,それらの水の供給は断続的なものか,もしくは全く供給されていないと,DINEPA(国営の水道会社)が明らかにした。
コ 2月20日 16日金曜日の夜にデルマ(Delmas)19で起きた刑事殺害事件に対し,ラフォンタン首相は,国家警察最高議会(CSPN)の権限を使用し,国の治安強化に対する政府の決定を新たにした。
サ 2月22日 北県カパイシアン(Cap-haitien)市の市場で火災が起きた。22日から23日にかけての夜,消防士の素早い消火活動によって,市場(Tabernacle)での火災は最小限に抑えられたことが市民保護局(DPC)によって報じられた。
シ 3月1日 シテ・ソレイユ(Cite soleil)市で生徒が教師の配置を求めて行ったストライキをした結果,7名(うち3名が生徒)が怪我を負い,また,生徒2名と教師1名が警察によって警棒で叩かれ複数の怪我人がでた。
ス 3月3日 3日から4日にかけての夜,アルティボニット県サンマルク(Saint Marc)にある公共市場で火災があり,商品倉庫として機能していた場所は全崩壊してしまったが,消防士と沿岸の住民による消火活動によって,市場全体が崩壊することはなく,消火することができた。
セ 3月8日 税関のストライキが行われて3日目,この影響により繊維産業は,原材料がないことが原因で6社が休業となった。
ソ 3月26日 フォトジャーナリストの失踪から11日が経過したが,失踪に関する警察当局や司法当局の沈黙に対して,ハイチメディア協会(ANMH)は懸念を示した。
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》不明《主な報道・事件》特になし。
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,司法制度,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。● 海外安全対策情報(2017年7月~9月)
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