海外安全対策情報(ハイチ)2015年 7月~9月
1 治安・社会情勢
(1)2015年9月末現在のハイチ治安情勢は,全般的に平静を保っているといえる。しかし,貧困問題に加え,選挙を控え不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際には満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)ほとんどの事件は人口が集中した首都周辺地域で発生しており,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2015年10月25日の大統領選挙(決戦投票は12月27日予定)及び議会選挙等に関しては,逮捕者も発生し若干の問題は発生したものの総じて安全に実施されたが,対立陣営間の争いや妨害行為やデモやその関与が噂されている殺人事件が少数ながら発生しており,引き続き決戦投票に向けて各陣営の支持者間の衝突の可能性も否定しきれないため,その他様々な要因も含めた問題発生に備え治安を注視していく必要がある。
選挙予定日の前後は、いくつかの投票所においては興奮した市民が集まり騒動へ発展する危険性が有る。特に過去の選挙で治安が悪化した西県ポルトープランス市周辺(首都圏),現在土地問題で住民のデモが続く西県北部アーカイエ(Archaie)市,政治騒動の多い西県プチ・ゴワーブ(Petit Goave)市周辺,レオガン(Leogane)周辺(特にグレシエ(Gresye)市),アルティボニト(Artibonite)県ミルバレ(Mirebalais)市周辺,中央県南部及び北県カッパエイシアン(Cap-Haitien)市周辺都市等は要注意と言えるが、国道1号線沿いの大中都市を中心とするその他地域についても現状では予測が難しく毎日の動向を注視していきたい。
ハイチでのデモは,岩や木の幹を置く,タイヤを燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 8月13日,首都ポルトープランス市の主要道路ジョンブラウン(John Brown)通りにおいて,アンジェ・ブルー(Ange Bleu)社(遺体安置で有名)社長が,銀行帰りにバイクに乗った何者かに銃撃され首を撃たれて死亡した。
イ 8月14日現地報道によると,13日早朝,ペチョンビル市カリビアンマーケット(Caribbean Market)邦人に人気のスーパーマーケット)周辺のメテルス(Metellus)通りにおいて,強盗とみられる2人が私服警官を襲い,警官の逆襲に遭い銃撃され死亡した。
ウ 8月31日正午頃,首都ポルトープランス市において銀行帰りの神父が銃撃を受け強盗被害に遭った。神父は複数の銃弾を受け重傷を負った。
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 7月5日,選挙管理委員会(CEP)職員が首都ポルトープランス市デルマ(Delmas)地域において射殺されているのが発見された。
イ 7月8日,シテ・ソレイユ(Cite soleil)市ラサリーヌ(la saline)地区において,ハイチ国立大学(stateuniversity of haiti)農業科学(agronomy and veterinary medicine)教授が,バイクに乗った何者かに数発の銃弾を受け死亡した。
ウ 8月26日午後,タバール(Tabarre)地域(空港及び米大付近)において,ハイチ国家警察の元幹部及びその知人のハイチ人(アメリカ国籍)が銃撃され,警察官は重傷,知人が死亡した。
(3)強姦
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》昨年同時期と同様,発生数は多い。
《ハイチデモ概要》首都においては,聖ジャン・ボスコ(St-Jean-Bosco)教会から大統領府を目指すルートが取られることが一般的だが,希に別ルート(空港付近・ペチョンビル市等)を取ることもある。デモに触発され興奮した住民による活動が活発になる危険性も考えられるため,警戒が必要。近年,プチゴア-ブ市においても,政治家に不満を持つ市民のデモが頻発している。
9月3日,4日,10日,17日及び18日,ファンミ・ラヴァラス(Fanmi Lavalas),ヴェリテ(Verite)等の主要野党が選挙管理委員会(CEP)委員長の辞任を求めてデモを実施した。ルートについては,首都ポルトープランス市を中心とし,何度か当館が所在するペチョンビル市にある選挙管理委員会(CEP)事務所にも詰めかけた。参加人数は2,000~4,000人。
(5)麻薬
《傾向》発生数は減少傾向である。
《主な報道・事件》
特になし
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 7月,現役警察官を含む数名が,ハイチ国家警察へ就職するための訓練及び斡旋を行うとし,市民をだまし授業料等を得たとして逮捕された。
イ 7月12日,MINUSTAHとハイチ国家警察がシテ・ソレイユ(Cite-Soleil)市周辺においてギャング一掃ミッションを実施し,ギャングリーダー9人を含む113人を逮捕した。
ウ 8月29日から30日にかけての深夜,選挙管理委員会(CEP)委員の自宅
(首都ポルトープランス市デルマ(Delmas)地域)が銃撃される事件が発生した。
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数は,2013年以降減少傾向であったが,昨年と比べ増加傾向にある。
当国における誘拐事件は,従前より首都圏を中心とした犯罪者集団及びその模倣犯による富裕層をターゲットとした無差別誘拐が大半を占めていたが,ハイチ国家警察及びMINUSTAHの活動により,過去5年または10年で見れば誘拐事件発生件数は低下してきている。
《主な報道・事件》
特になし
《邦人被害》
邦人被害は発生していない。
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。
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