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海外安全対策情報(ハイチ)2015年 4月~6月
1.治安・社会情勢
(1)2015年6月末現在のハイチ治安情勢は,全般的に平静を保っているといえる。しかし,貧困問題に加え,選挙を控え不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際には満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)ほとんどの事件は人口が集中した首都周辺地域で発生しており,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2015年8月9日に予定されている上下両院選挙に向けては,大きなデモが発生することもなく,治安状況は落ち着いて推移している。しかしながら,10月25日に予定される大統領選挙(セカンドラウンドは12月27日予定)及び地方議会選挙に関しては,候補者リストへの登録が出来なかった政治団体等のデモやその関与が噂されている殺人事件が少数ながら発生しており,その他様々な要因も含めた問題発生に備え治安を注視していく必要がある。
昨年2014年10月26日の選挙が延期となった際には,野党勢力によるデモが首都圏や国内主要道路において頻繁に発生しており,今後の選挙動向如何では治安動向が悪化することも十分に考えられるため注意が必要である。
選挙予定日の前後は、いくつかの投票所においては興奮した市民が集まり騒動へ発展する危険性が有る。特に過去の選挙で治安が悪化したシテソレイユ市、プチゴワーブ市等は要注意と言えるが、その他地域についても現状では予測が難しく毎日の動向を注視していきたい。
また,米ドルに対するハイチグルド安が急激に進んでおり,これが市民の生活環境を悪化させる可能性が有り,国民の不満を高める懸念材料の1つと言える。
ハイチでのデモは,岩や木の幹を置く,タイヤを燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。
2.殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 5月15日,ペチョンビル市内の民間銀行において,周りをうろつく不審な人物が2人逮捕された。強盗を企てた疑いで取り調べを受けている。
イ 6月29日,現地報道によると, シモン・ペレ地区にてギャング同士の抗争があり4人が死亡した。6月中に, シモン・ペレ地区周辺では既に15人の殺人が発生している。
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 5月20日,ポルトープランス市(デルマ地区)において, 内務省高官兼ノートルダム大学教授であるエマニュエル・グティエ氏の遺体が発見された。遺体には7発の銃痕があった。警察は,選挙絡みの事件と見て調査を進めている。
(3)強姦
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》昨年同時期と比べ,発生数は増加傾向である。
《ハイチデモ概要》首都においては,セントジャンボスコ教会から大統領府を目指すルートが取られることが一般的だが,希に別ルート(空港付近・ペチョンビル市等)を取ることもある。デモに触発され興奮した住民による活動が活発になる危険性も考えられるため,警戒が必要。近年,プチゴア-ブ市においても,政治家に不満を持つ市民のデモが頻発している。
ア 4月14日日,現地報道によると,国境近くの街ワナメント及びフォール・リベルテで電力供給を求めるデモが行われた。同地域で支持率が高い次期上院議員選挙候補のファンミ・ラヴァラスのジョアザール氏が呼びかけた。武装したデモ隊はドミニカ共和国のトラック4台を奪い道路を封鎖,デモは混乱し,銃撃によりチリのMINUSTAH要員1名が命を落とし,ハイチ国家警察警察官1名を含むハイチ人の怪我人が多数発生した。
イ 5月6日,身代金目的の誘拐等で拘留されていたギャング組織のリーダーソンソン・ラ・ファミリアが突然釈放されたことに対し,ハイチ人権を守る会(RNDDH:The national Network for the Defence of Human Rights)等が抗議活動を行った。
ウ 6月29日,7月3日及び9日,プレヴァル元大統領が設立した政治団体ヴェリテ(VERITE)は,同団体の大統領選挙候補者ジャッキー・リュマルク氏が臨時選挙管理委員会(CEP)に書類不備のため候補者登録から外されたことを不満とし,ポルトープランス市及びペチョンビル市においてデモを実施した。
(5)麻薬
《傾向》発生数は減少傾向である。
《主な報道・事件》
特になし
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 4月17日, 身代金目的の誘拐等で拘留されていたギャング組織のリーダーソンソン・ラ・ファミリアが突然釈放された。同人物は,現大統領との交友関係があるとされており,政府と近しい関係が噂されている。今回の件についても,政府関連の圧力があったとされている。今後は,当人が滞在すると思料される首都圏周辺の治安動向を特に注視する必要がある。
イ 5月15日,プチゴワーブ市にて,選挙事務所が焼き討ちに遭った。
ウ 5月19日から18日の間,ミラゴアンヌ市他においてギャンググループ・ティボンホームのリーダー2人を含む5人が逮捕された。殺人,違法拳銃所持等の罪に問われている。
エ ドミニカ共和国が今年1月に発表した,不法滞在のハイチ人凡そ25,000人の送還について,両国間の緊張が高まっている。ハイチ政府は,ドミニカ共和国政府が同国内に滞在するハイチ人に対し,滞在手続きの機会を平等且つ十分に与えていないことを不当とし,人権侵害との立場から送還を拒んでいる。現在,ハイチにおいて同案件を非難するデモも数件発生している。送還は既に始まっており,送還対象者達が首都圏周辺に流れ込むことが考えられ,治安の悪化が懸念される。
3.テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4.誘拐・脅迫事件発生状況
邦人被害
邦人被害は発生していない。
《傾向》発生数は,2012年以前よりは低いものの,2013年以降と比べ増加傾向である。
当国における誘拐事件は,従前より首都圏を中心とした犯罪者集団及びその模倣犯による富裕層をターゲットとした無差別誘拐が大半を占めていたが,ハイチ国家警察及びMINUSTAHの活動により,最近では誘拐事件発生件数は低下してきている。
《主な報道・事件》
5月12日,同月8日にミルバレ市において誘拐されていた女性2人が解放されたことを,ハイチ国家警察及び国連警察が発表した。
5.対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6.日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7.邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起のメール一斉配信を実施している。
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