|
海外安全対策情報(ハイチ)2015年 1月~3月
1.治安・社会情勢
(1)2015年3月末現在のハイチ治安情勢は,全般的に平静を保っているといえる。しかし,貧困問題に加え,選挙を控え不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際には満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)ほとんどの事件は人口が集中した首都周辺地域で発生しており,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2014年10月26日に予定されていた選挙が延期となり生活環境への不満を主な要因とする野党勢力によるデモが首都圏や国内主要道路において頻繁に発生しており,岩や木の幹を置く,タイヤを燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。特に,プチゴワーブ市周辺の国道2号線においては,政治家に対する周辺住民の不満が大きく,多くのデモやロードブロックが発生している。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。なお,2015年実施予定の選挙日程に大幅な遅延が見られれば,一部で大規模なデモを誘発し,一時的に国内の騒擾につながる危険性も十分考慮しておくべきである。
2.殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 1月,トゥサン・ルベルチュール国際空港付近のクラシーン地区において,銀行帰りの男性が3人組のバイクに乗った賊に襲われ死亡した。銀行で引き出した現金を強奪された模様。他にも,各国警備責任者会議での情報によれば,デルマやペチョンビル等の首都圏においても一般市民を狙った銃撃事件が多数発生している。
イ 1月15日朝,首都圏デルマ地域において, 銀行からの帰りに車輌を襲撃され1名が殺害された。犯人は現金を奪い逃走している。
ウ 2月3日,現地報道によると,フォンタマラ地域において,以下のとおり2件の殺人事件が発生した。
(ア)1月30日,警察官1名が自宅付近を車で移動中に何者かに射殺された。
(イ)1月31日,医師1名が車で移動中に何者かに射殺され,金品を強奪されている。
エ 3月31日,シスターの自宅に強盗が入り,犯人は彼女の首元に拳銃を押しつけた。彼女は銃撃はうけなかったものの,石で頭を打たれ重傷を負った。昨年11月より,27カ所のカトリック施設に少なくとも39件の強盗が入っている。
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 1月22日,現地報道によると,首都圏デルマ地域においてバイクを使った襲撃事件が発生,刑務所で働く男性1名が殺害された。
イ 3月4日,現地報道によると,3日に,カルフール地域において市民2名がバイクに乗った数人に銃撃され,1名が死亡,1名が重傷を負った。
ウ 3月4日,現地報道によると,3日に,ミラゴアン市において警察官1名が何者かに頭を撃たれ殺害された。
エ 3月9日,現地報道によると,8日に,シテソレイユ市のコンサート会場において騒動が起き,1名が死亡,4名が重傷を負った。騒動の内容や原因の詳細は不明だが,同地域はギャングが存在しており,何かのトラブルが発生した模様。
オ 3月26日,現地報道によると,首都圏デルマ地域において銃撃事件が発生,女性1名が重傷を負った。
(3)強姦
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》昨年同時期と比べ,発生数は増加傾向である。
《主な報道・事件》一部の強硬派野党によるデモが発生している。首都においては,セントジャンボスコ教会から大統領府を目指すルートが取られることが一般的だが,希に別ルート(空港付近・ペチョンビル市等)を取ることもある。デモに触発され興奮した住民による活動が活発になる危険性も考えられるため,警戒が必要。
<首都ポルトープランス市>
ア 首都ポルトープランス市近郊にて,1月から3月の間,大小併せ凡そ10回の反政府デモが実施された。主な実施グループは野党勢力(MOPPOD等)。デモ隊は警察特殊部隊の警戒を受けながらも,大使館や館員宅の在るペチョンビル市を通過することもあった。
イ 当地2月26日付報道によると,ドミニカ共和国にて発生したハイチ人殺害事件を受け,同月25日,在ハイチドミニカ共和国大使館周辺で大規模なデモが発生した。ハイチ国家警察も出動したが,数千人のデモ隊を制御することは出来なかった模様。
(5)麻薬
《傾向》発生数は減少傾向である。
《主な報道・事件》
ハイチ国家警察の発表によると,12月15日からの1ヶ月の間に,国内において強盗や強姦等で30人を逮捕したと発表した。あわせて,犯人より拳銃や麻薬(大麻25㎏,1.82㎏)を押収したとのこと。
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 1月20日,ハイチ国家警察とMINUSTAHによる合同ミッションにより195丁の銃器と弾丸等が回収された。ハイチ国家警察の見解によると,ハイチ国内には250,000丁以上の違法銃器が存在すると予想されており,銃器保持に関する規則を強化することが求められている。
イ 1月から3月の間,燃料価格引き下げを求める全国規模のストライキが2度発生した。主な参加団体は,ハイチ労働組合のための国民連合(交通関連運用者及び運転手組合(APCH),野党団体及び学生連合等。空港付近や国道1号線等において,ストに参加をしない労働者の取り締まりを目的にロードブロックが発生した。治安上の危険性があるとし,多数の商店やオフィスが閉まるなどの影響が見られた。
ウ 2月12日,現地報道によると,シテソレイユ市においてギャング同士の銃撃戦があり,3名が死亡した。
エ 2月27日,首都圏においてMINUSTAH車輌が何者かに襲撃され燃やされる事件が発生,車輌内の人間はポルトープランス市の国立病院へ緊急搬送された。
3.テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4.誘拐・脅迫事件発生状況
邦人被害
邦人被害は発生していない。
《傾向》発生数は減少傾向である。
当国における誘拐事件は,従前より首都圏を中心とした犯罪者集団及びその模倣犯による富裕層をターゲットとした無差別誘拐が大半を占めていたが,ハイチ国家警察及びMINUSTAHの活動により,最近では誘拐事件発生件数は低下してきている。
《主な報道・事件》
(1) 2月26日,ル・ヌーヴェリスト紙記者から治安情報聴取したところ, 1月から2月前半までの間,カルフール市で子供1名が誘拐,リラボア地区にて14才の少女が誘拐されたとのこと。
(2) 3月10日,ゴナイーブ市で誘拐犯と見られる5人が逮捕された。5人は,車を強奪し,車に乗っていた複数名を誘拐・強姦し,途中その複数名を救おうとした人達に向かって発砲していた。被害者の内2名は,犯人逮捕前に身代金の支払いにより既に解放されていた。
5.対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6.日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7.邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起のメール一斉配信を実施している。
|
|