炭疽菌感染症発生のお知らせ

令和元年9月4日
ハイチにお住まいの皆様及び旅行者の皆様へ
在ハイチ日本国大使館
 
1 保健省によりますとグランダンス県ジェレミー市(Jeremie)マルフラン(Marfranc)地区およびプレヴィル(Previle)地区において炭疽菌の感染者が報道されました。「感染者は今年1月から8月までに18例で感染の拡大は見られていない」と発表されています。
今回報告された炭疽菌がインフルエンザ,エボラのように在留邦人の皆様に直接感染することは考えにくいと思われます。ただし,感染予防の注意が必要です。(1)一般的な食中毒と同じように,調理に際して十分加熱すること,(2)信頼のおけるお店で購入,信頼のおけるレストランで食事をすることです。
 
2 過去の炭疽菌発生
ハイチでは時々炭疽菌の発生があります。保健省の報告では1989年から1996年までに1,357件が報告されています。特に1988年ジェレミー市で164 件,ブリレール地区(Brillere)では100件発生し12名が死亡しています。実数は遙かに多いようです。ある報告ではジェレミー市で定期的に発生するのは炭疽菌に汚染された土壌から菌の胞子が空中に散布され,牛,羊,豚,山羊,馬などの家畜に伝染する。そして感染した家畜を取り扱う畜産業者,肉屋が炭疽菌に罹患するとされています。子供が感染するのは食肉処理を手伝わせたり,家畜と濃厚に関わって生活するため,と報告されています。
 
3 日常生活において炭疽に感染する可能性は低いと思われますが,上記場所へ渡航又は滞在中の場合,家畜や野生動物との接触は避け,安全が確認できない肉を食べないようご注意ください。また,下記炭疽の感染の症状が現れた場合,速やかに最寄りの医療機関を受診して下さい。
 
4 つきましては,ハイチへの渡航・滞在を予定している方,及び既に現地に滞在中の方は,在ハイチ日本国大使館のホームページを含め,最新情報を随時確認の上,炭疽の感染予防に努めてください。
 
5 炭疽について
(1)炭疽とは
炭疽は,炭疽菌(Bacillus anthracis)による感染症です。主な流行地域は,スペイン南部,トルコ,イラン,中央アジア,パキスタンにまたがる一帯であり炭疽ベルトと呼ばれています。中南米,サハラ以南のアフリカでも見られます。
(2)症状と治療
1~7日間の症状のない時期のあとに,皮膚の異常(皮膚炭疽),消化器の異常(腸炭疽)や呼吸器の異常(肺炭疽)がおこります。感染の95%以上は皮膚炭疽です。皮膚に触れただけで感染することはほとんどなく,傷から体内に菌が取り込まれることによって感染します。まず痒みがおこり,続いてイボ状のできものができ,それが水ぶくれになって大きくなり,えぐれて潰瘍になり,最後にはくぼんで硬い黒いかさぶた状のものができます。全く治療をしないと10~20%が死亡します。ペニシリンやフルオロキノロンによる抗生物質による治療が行われます。
(3)海外での感染防止
炭疽が流行している地域に渡航する場合及び滞在中は,以下の点に注意してください。              
●家畜(牛,羊),野生動物に近づくことを避け,肉や臓器,皮や毛などに触らない。
●安全が確認できない肉は食べるのを避けましょう。
●酪農場,と殺場を訪問する際は,家畜類には近づかない。
●家畜類との接触後,上記炭疽様症状が現れた場合には,速やかに最寄りの医療機関を受診しましょう。
 
(参考情報)
●厚生労働省検疫所(FORTH):炭疽
https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name52.html
●国立感染症研究所 炭疽
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/435-anthrax-intro.html