海外安全対策情報(2016年10月-12月)

平成29年2月14日
1 治安・社会情勢
(1)2016年10月~12月のハイチ治安情勢は,大統領選挙を巡る政党間での対立に起因すると思われるデモ等が発生はしているものの,犯罪統計的には大きな変動はない。しかし,悪化する経済状況(高インフレ率,通貨安,干ばつ等),貧困問題に加え,実施中の各種国政選挙により不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際は満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2015年に開始された大統領選挙について,プリヴェール(PRIVERT)暫定政権は選挙評価検証委員会による報告書を発表し,「選挙をゼロからやり直しすべき」との見解を示した。これにより,2016年4月24日に予定されていた決選投票は白紙となり,臨時選挙管理委員会(CEP)から新選挙日程(第1回投票を2016年10月9日に実施)が提示された。その後,11月4日にハリケーン・マシューにより甚大な被害を受けたため,選挙は11月20日に延期となり実施され,12月4日に暫定結果発表がなされた。この期間,野党によるデモ等が多く発生しており,今後も治安状況を注視していく必要がある。
ハイチでのデモは,岩や木の幹を置く,タイヤや車を燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。
 
 2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 10月4日にハイチを襲ったハリケーン・マシューにより大被害を受けた南県及びグランダンス(Grand’ Anse)県を中心に,援助物資を運ぶ車両等が襲撃される事件が多発した。
イ 12月2日,アルティボニト(Artibonite)県ゴナイーブ(Gonaives)市において,バイクに乗った2人が両替所を襲撃した。2人は,犯行直後に警察に逮捕された。
 
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
10月7日,ペチョンビル(Petion-Ville)市の高級住宅街モンターニュノワール(Montagne Noire)地区において警察官1人が殺害された。当警察官は,強盗被害の連絡を受けて事件現場に駆けつけたところ複数人の強盗犯と撃ち合いになり銃弾を受けた。
 
(3)強姦 
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
 
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》 11月20日の第1回大統領選挙等,12月4日の暫定結果発表前後に中小規模のデモ等が発生した。
 
(5)麻薬 
《傾向》発生数は減少傾向である。
《主な報道・事件》特になし。
(6)その他 
《主な報道・事件》
ア 10月8日,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市から20キロ程北側に位置するラフィト港(Wharf Global Lafito)において,税関事務所が14丁の銃器等を摘発した。
イ 10月11日,西県デルマ(Delmas)市において,現役警察官を含む車両窃盗団が逮捕された。
ウ 10月24日,西県アルカイエ(Archaie)市刑務所において集団脱走事件が発生,172人が脱獄した。脱走犯の大部分は再逮捕されておらず,捜索が続いている。
エ 11月5日,西県プチ・ゴワーブ(Petit Goave)市にて殺人で指名手配中であったギャング・ティラスタ(Ti Rasta)(通名)が逮捕された。また,6日には同地域に於いて路上強盗で指名されていたソンソン(Sonson)(通名)が逮捕されている。
オ 12月3日,プチ・ゴワーブ市にてギャンググループ・ベース509(Base509)のナンバー1,ティロニ(Ti Rony)と,ナンバー2,ティウッドレイ(Ti woodley)が逮捕された。また,4日には,ギャンググループ・ホートテンション(Haute tension)のメンバーで,危険人物として噂のあったダニエル(Daniel)が逮捕されている。
 
カ 12月5日,国際空港にて指名手配中のジュニア・デシモス(Junior DECIMUS)が,アメリカへ渡航しようとするところを逮捕された。デシモスは,カルフール(Carrefour)市グランラビン(Grand Ravine)を拠点とするギャンググループ・テットカレ(Tet Kale)のリーダー。
キ 12月11日,西県ペチョンビル市内に存在する通称ジャルジー(Jalousie)と呼ばれるスラム街の住民達が,大なたや拳銃を掲げて市内を行進し市警察署に詰め寄る騒ぎがあった。住民達は,ジャルジーにおいてギャンググループが若い警察官を大なたで殺害したことに憤慨し,警察が逮捕した殺害犯を自分たちの手で始末するとして,警察に対し犯人を引き渡すように訴えた。
 
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
 
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数に減少傾向は見られない
《主な報道・事件》
特になし。
 
邦人被害
西県タバール(Tabarre)市クレアシン(Clercine)地区の路上にて,邦人女性1名が同僚女性1名及び運転手と共に,車両にて銀行からの帰路に渋滞を進行中,バイクに乗った男3人に拳銃を突きつけられ強盗行為を受けた。
 
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
 
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
 
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。