海外安全対策情報(2016年4月-6月)
平成28年8月9日
1 治安・社会情勢
(1)2016年4月~6月のハイチ治安情勢は,暫定政権の継続を巡る政党間での対立に起因すると思われる事件が多少発生はしているものの,犯罪統計的には比較的平静を保っているといえる。しかし,悪化する経済状況(高インフレ率,通貨安,干ばつ等),貧困問題に加え,実施中の各種国政選挙により不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際は満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2015年に開始された大統領選挙について,プリヴェール(PRIVERT)暫定政権は選挙評価検証委員会による報告書を発表し,「選挙をゼロからやり直しすべき」との見解を示した。これにより,2016年4月24日に予定されていた決選投票は白紙となり,暫定政権より新選挙日程(第1回投票を2016年10月9日に実施)が提示された。その前後から,警察官や民間企業の社屋等を狙った発砲事件が多く発生している。犯罪の首謀者や目的は判然としないものの,政治的な意図が関係している可能性もあることから,今後も治安状況を注視していく必要がある。
ハイチでのデモは,岩や木の幹を置く,タイヤや車を燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 5月6日現地紙報道によると,クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)市内におい住宅強盗が頻繁しており,注意が必要。
イ 5月10日,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市ブルドン(Bourdon)地区にて元観光大臣が車両を強奪された。その後,デルマ(Delmas)市41地区にて警察が強盗にあった車を発見し犯人と銃撃戦となり,その結果犯人1人を銃殺したが,2人には逃走を許した。
ウ 6月10日,デルマ(Delmas)市32地区にある海外送金所が強盗に遭い,1人が死亡した。
エ 6月25日,ペチョンビル(Petion-Ville)市ランベール(Rue Lambert)通りで,スウェーデン人観光客の夫婦がホテルを探して徒歩で移動しているところを強盗に襲われた。夫は銃を受け死亡,妻は打撃を受けて怪我を負った。
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 4月5日,カルフール(Carrefour)市マルティッサン(Martissant)19地区において農業関係者が殺害されているのが発見された。
イ 4月7日,南県アクイン(Aquin)市にて,元経済・財政大臣の叔父で有名実業家であるボブ・アングラド(Bob Anglade)氏が殺害されているのが発見された。
ウ 4月15日早朝,当館が存在するペチョンビル(Petion-Ville)市フルール(Freres)地域において,男性が銃撃され死亡した。
エ 5月17日,デルマ市において,臨時選挙管理委員会(CEP)職員の車両を運転していた運転手が何者かに襲撃され銃殺された。
オ 6月16日朝8時頃,デルマ市ピュイ・ブラン(Puits Blain)地区において,銀行勤めの男性がバイクに乗った2人組に車を止められ拳銃を突きつけられたためそれを振り払い逃げた所を銃撃を受け,逃亡の後に死亡する事件が発生した。
(3)強姦
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》発生件数的には,ハイチが休暇シーズンに入っていることもあり,一時的な減少傾向にあると思量される。休暇シーズンの終わる今年9月辺りから,10月に予定されている大統領選挙に向けて,発生件数が増加することが危惧されるところ注意を要する。
ア 5月9日,民主主義監視団(OCID:The Citizen Observatory for Institutionalizing Democracy)等の発表によると,2015年8月9日及び10月29日の選挙により,全国で合計208人が逮捕された。
イ 5月13日,首都圏においてペ・アシュ・テ・カ(PHTK)によるプリヴェール(PRIVERT)暫定政権に反対するデモが実施された。
ウ 6月7日から8日にかけて,首都ポルトープランス市において与野党間でデモが発生,市内では略奪行為,武器を用いた襲撃,複数のガソリンスタンド等に対する放火,放火未遂が発生した他,深夜に外務・宗務省建物等に対し複数の発砲があった。
エ 6月13日,首都圏においてプリヴェール(PRIVERT)暫定政権によるデモが発生,翌日14日には,反対勢力ペ・アシュ・テ・カ(PHTK)を中心としたデモが行われた。
(5)麻薬
《傾向》発生数は増加傾向である。
《主な報道・事件》
ア 4月18日,中央県サバネット(Savanette)市付近の国境線において,ハイチ国家警察が麻薬取引等の従事者一掃作戦を実施した。その結果,5人が逮捕され,13台のバイクと複数の拳銃が没収されている。クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)市とサバネット(Savanette)市の取引グループに何らかの関連性が疑われており現在捜査中とのこと。
イ 5月31日,ミラゴアン(Miragoane)市から出向した船がマイアミで検挙され,2,000ポンド(907キロ)のコカインが没収された。
ウ 6月22日,DNCD(ドミニカ麻薬捜査官)は,ハイチ西県国境付近のジマニ(JIMANI)地域において,ハイチからトラックで大麻230キロを運び込もうとした2人を逮捕した。
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 4月7日夜間,南東県ジャクメル(Jacmel)市において16人の未成年が補導された。未成年が夜間ホテルやクラブをたむろすることが問題となっていた中,警察による一挙補導作戦が実施された模様。補導の後,未成年は両親へ引き渡された。
イ 4月16日,首都圏デルマ(Delmas)市28地区において,実業家が5人の男に銃撃されたが,直ちに警察が駆けつけ犯人全員を確保した。実業家の命に別状はなかった。
ウ 6月27日,西県国境のマラパス(Malpasse)地域へ向かう国道上で,停車していた大統領候補ジャン・ヘンリー(Jean Henry)の車両が何者かに襲撃を受けた。襲撃時,本人は車両から離れており怪我はなかった。
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数減少傾向である
《主な報道・事件》特になし
邦人被害
邦人被害は発生していない。
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。
(1)2016年4月~6月のハイチ治安情勢は,暫定政権の継続を巡る政党間での対立に起因すると思われる事件が多少発生はしているものの,犯罪統計的には比較的平静を保っているといえる。しかし,悪化する経済状況(高インフレ率,通貨安,干ばつ等),貧困問題に加え,実施中の各種国政選挙により不安定化する危険性は依然として存在している。殺人等の事件発生件数は緩やかな上昇を見せており,医療機関が十分に整備されていないため,事故や事件に巻き込まれて負傷した際は満足な治療を受けることは難しく,周辺諸国への緊急移送が必要となる可能性が高い。
(2)犯罪の約80%,デモの約60%が人口の集中する首都周辺地域で発生しているのがハイチの特徴であり,強盗や誘拐については無防備な外国人や富裕層ばかりでなく一般のハイチ人もターゲットにされ,場所や時間帯を問わずバイクや自動車で尾行し,交差点や通行妨害等により停車したタイミングを狙い襲撃する手口や,レストランや銀行等での待ち伏せ,空港からの帰路を狙った強盗犯罪及び住居への押入り強盗等の手口がみられる。また,殺人事件等の犯罪における銃の使用率は高い。
(3)2015年に開始された大統領選挙について,プリヴェール(PRIVERT)暫定政権は選挙評価検証委員会による報告書を発表し,「選挙をゼロからやり直しすべき」との見解を示した。これにより,2016年4月24日に予定されていた決選投票は白紙となり,暫定政権より新選挙日程(第1回投票を2016年10月9日に実施)が提示された。その前後から,警察官や民間企業の社屋等を狙った発砲事件が多く発生している。犯罪の首謀者や目的は判然としないものの,政治的な意図が関係している可能性もあることから,今後も治安状況を注視していく必要がある。
ハイチでのデモは,岩や木の幹を置く,タイヤや車を燃やすなどの方法によりバリケードを構築して通行妨害し,対応する国家警察及び国連部隊との衝突により興奮状態となった住民が投石等の過激行動をとる場合もあり,歩行者や通行車両が混乱に巻き込まれるケースがある。通常,デモの群衆は警察による催涙弾で鎮圧されることが多いが,銃器を所持している場合もあり,銃撃戦などに発展する危険性も排除できない。
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例及び一般犯罪の傾向
(1)強盗
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 5月6日現地紙報道によると,クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)市内におい住宅強盗が頻繁しており,注意が必要。
イ 5月10日,首都ポルトープランス(Port-au-Prince)市ブルドン(Bourdon)地区にて元観光大臣が車両を強奪された。その後,デルマ(Delmas)市41地区にて警察が強盗にあった車を発見し犯人と銃撃戦となり,その結果犯人1人を銃殺したが,2人には逃走を許した。
ウ 6月10日,デルマ(Delmas)市32地区にある海外送金所が強盗に遭い,1人が死亡した。
エ 6月25日,ペチョンビル(Petion-Ville)市ランベール(Rue Lambert)通りで,スウェーデン人観光客の夫婦がホテルを探して徒歩で移動しているところを強盗に襲われた。夫は銃を受け死亡,妻は打撃を受けて怪我を負った。
(2)殺人
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》
ア 4月5日,カルフール(Carrefour)市マルティッサン(Martissant)19地区において農業関係者が殺害されているのが発見された。
イ 4月7日,南県アクイン(Aquin)市にて,元経済・財政大臣の叔父で有名実業家であるボブ・アングラド(Bob Anglade)氏が殺害されているのが発見された。
ウ 4月15日早朝,当館が存在するペチョンビル(Petion-Ville)市フルール(Freres)地域において,男性が銃撃され死亡した。
エ 5月17日,デルマ市において,臨時選挙管理委員会(CEP)職員の車両を運転していた運転手が何者かに襲撃され銃殺された。
オ 6月16日朝8時頃,デルマ市ピュイ・ブラン(Puits Blain)地区において,銀行勤めの男性がバイクに乗った2人組に車を止められ拳銃を突きつけられたためそれを振り払い逃げた所を銃撃を受け,逃亡の後に死亡する事件が発生した。
(3)強姦
《傾向》発生数に減少傾向は見られない。
《主な報道・事件》特になし
(4)デモ(主な報道・事件)
《傾向》発生件数的には,ハイチが休暇シーズンに入っていることもあり,一時的な減少傾向にあると思量される。休暇シーズンの終わる今年9月辺りから,10月に予定されている大統領選挙に向けて,発生件数が増加することが危惧されるところ注意を要する。
ア 5月9日,民主主義監視団(OCID:The Citizen Observatory for Institutionalizing Democracy)等の発表によると,2015年8月9日及び10月29日の選挙により,全国で合計208人が逮捕された。
イ 5月13日,首都圏においてペ・アシュ・テ・カ(PHTK)によるプリヴェール(PRIVERT)暫定政権に反対するデモが実施された。
ウ 6月7日から8日にかけて,首都ポルトープランス市において与野党間でデモが発生,市内では略奪行為,武器を用いた襲撃,複数のガソリンスタンド等に対する放火,放火未遂が発生した他,深夜に外務・宗務省建物等に対し複数の発砲があった。
エ 6月13日,首都圏においてプリヴェール(PRIVERT)暫定政権によるデモが発生,翌日14日には,反対勢力ペ・アシュ・テ・カ(PHTK)を中心としたデモが行われた。
(5)麻薬
《傾向》発生数は増加傾向である。
《主な報道・事件》
ア 4月18日,中央県サバネット(Savanette)市付近の国境線において,ハイチ国家警察が麻薬取引等の従事者一掃作戦を実施した。その結果,5人が逮捕され,13台のバイクと複数の拳銃が没収されている。クロワ・デ・ブーケ(Croix-des-Bouquets)市とサバネット(Savanette)市の取引グループに何らかの関連性が疑われており現在捜査中とのこと。
イ 5月31日,ミラゴアン(Miragoane)市から出向した船がマイアミで検挙され,2,000ポンド(907キロ)のコカインが没収された。
ウ 6月22日,DNCD(ドミニカ麻薬捜査官)は,ハイチ西県国境付近のジマニ(JIMANI)地域において,ハイチからトラックで大麻230キロを運び込もうとした2人を逮捕した。
(6)その他
《主な報道・事件》
ア 4月7日夜間,南東県ジャクメル(Jacmel)市において16人の未成年が補導された。未成年が夜間ホテルやクラブをたむろすることが問題となっていた中,警察による一挙補導作戦が実施された模様。補導の後,未成年は両親へ引き渡された。
イ 4月16日,首都圏デルマ(Delmas)市28地区において,実業家が5人の男に銃撃されたが,直ちに警察が駆けつけ犯人全員を確保した。実業家の命に別状はなかった。
ウ 6月27日,西県国境のマラパス(Malpasse)地域へ向かう国道上で,停車していた大統領候補ジャン・ヘンリー(Jean Henry)の車両が何者かに襲撃を受けた。襲撃時,本人は車両から離れており怪我はなかった。
3 テロ・爆弾事件発生状況
当国においては当該事件の発生は認知されていない。
4 誘拐・脅迫事件発生状況
《傾向》発生数減少傾向である
《主な報道・事件》特になし
邦人被害
邦人被害は発生していない。
5 対日感情
対日感情は基本的に良好であり,特段の変化は見られない。
6 日本企業の安全に係わる諸問題
現在,当地に日本企業は存在していないが,当地でのビジネスを模索する企業にとっては,治安情報を考慮した防犯対策及び交通機関等のインフラ環境が懸念材料となっている。
7 邦人安全対策のためにとられている具体的処置
当地へ来訪のNGO及びJICA関係者等に対し安全ブリーフィングを行い,必要に応じて,治安情勢及び注意喚起につき当館HP上に掲載すると共にメール一斉配信を実施している。